フランスパン

2014年03月15日



私がパン職人になってしばらくしたころ、80年代の中ごろから90年代にかけて
本場フランスでは労働環境を改善しようと、短時間で焼き上げる
フランスパンが主流でした。

フランスもパン屋さんはもちろん早起きです。
日本のパン屋さんが4時台から5時台に活動を開始するのに比べ
向こうでは夜中の12時を回れば働きだします。

やはりパンの国では、朝食に間に合わせるために、そうせざるを得ないのが現状です。
それを少しでも朝がゆっくりスタートできるように短時間でというのもうなずける話です。

当時、来日したフランス製パン学校教授の話では日本のフランスパンが今は(当時)
世界で一番おいしいと、お褒めをいただいたものです。

しかし、グルメ大国のフランス人がそれで黙っているわけがありません。
試行錯誤を重ねた末の短時間法のレシピとは言え、
じっくり時間をかけて熟成させたパンと比べ本来のおいしさには届きません。
その後紆余曲折を重ね、発酵種(ルヴァン)の研究が進み
2000年頃には上の画像のようなフランスパンが流行を見せ
日本にもその技術がどんどん入ってきました。
「レトロバゲット」なるものです。
精製度の低い、灰色っぽい小麦粉を使いイースト菌に頼らず
自家製の発酵種(ルヴァン)をメインに使いさらに長時間発酵熟成させて
焼き上げる。
短時間法に比べ、10倍以上の時間をかける古い時代に当たり前に行われていた
製法です。

私がフランスを旅した2007年には私が見た数十件のパン屋さんのほとんどが
「レトロバゲット」をお店の看板商品にしていました。

さて、昨今フランスでは
移民人口が増加している事情から白っぽく焼くフランスパンが流行りだしていると聞きます。
日本にフランスパンが広まりだした30年ほど前を思い出しました。
今思い出すと笑ってしまうほど日本のフランスパンは白かった。
そして当然柔らかくて。でも、それはそれで当時は美味しかったのです。

実際に今のフランスのパンを食べてみないことにはわかりませんが
時代の流れは罪なものですね。
きっと、また、古き良き時代のパンが看板になる日を私は待っています。


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Posted by ひかりのはる at 13:11 | Comments(0) | 旅するパン職人 | パン
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